トコジラミ(南京虫)の生態と被害

トコジラミ生態、特徴

トコジラミの流行の背景

トコジラミは日本で戦後大流行しましたが、東京五輪が開かれた1964年ごろを境に減少の一途をたどり、1970年代にはほとんど見られなくなりました。しかし、最近再び日本国内で被害例が報告されるようになってきました。

その背景は、年々増加していた海外からの訪日外国人や海外渡航者が持ち帰ったことによります。

その持ち運ばれたトコジラミは、駆除でよく使われているピレスロイド系の薬剤に強い抵抗性を持っており、そのことが駆除を困難にし被害が増加傾向にある要因です。海外では既にトコジラミが猛威を振るい大きな社会問題になっています。
現在、日本でも住宅、ホテルなどの宿泊施設において被害が年々増加傾向にあります。

トコジラミってどんな虫?

トコジラ成虫

       トコジラミの成虫

トコジラミは別名:南京虫(ナンキンムシ)と呼ばれ人間の血を吸血する外部寄生虫※です。
名前は「トコジラミ」ですがシラミではなくカメムシの仲間です。
通常は寝室など人が睡眠、休憩する場所のベッドや布団、周辺の隙間などに生息しています。
海外では、Bed-Bug(ベッドバグ)と呼ばれ『夜間、寝ている間に噛まれる』ことから由来しています。
トコジラミに噛まれてしまうと尋常ではない痒みが一週間以上つづくことに加え貧血やアレルギー反応が出てしまうこともあります。

※外部寄生虫【トコジラミ、ノミ、マダニ、シラミ、一部のダニ】

人間に限らず、動物には色々な寄生虫が体の内外に棲みつこうとします。 そのうち、宿主に寄生し吸血して暮らす虫を「外部寄生虫」といいます。

トコジラミの形態・生態

成虫・幼虫・卵の形態

トコジラミの卵や幼虫はとても小さい

トコジラミの卵や幼虫はとても小さいので見極めが困難

成虫幼虫
大きさ・形状5~8mm・楕円形1.3~4.5mm・楕円形約1mm・長円形
赤~茶褐色孵化直後は淡黄色乳白色
寿命・期間寿命3~9ヵ月幼虫期間:20~48日間3~10日で孵化
その他の特長飢餓に強い。吸血なしでも半年以上生存。孵化後すぐに吸血。5回の脱皮で成虫に。各幼虫期に一回以上の吸血が必要。とても小さく見つけにくい。

活動・繁殖時期

気温25度、湿度60%以上の環境を好み、夏をピークに春先から活動を始め繁殖します。冬でも暖房や加湿器が完備され室温が一定に保たれている環境では、トコジラミの活動を促す結果となります。

産卵

夏をピークに1日に5~6個。生涯に200~500個の卵を産みます。卵の大きさは1ミリ程度です。

気温による寿命の変化

卵から成虫になるまでの時間や成虫の生存期間は温度や湿度によって変化します。気温25度の場合、卵は約5日で孵化します。卵から成虫になるまでの期間は約40日です。気温18度では125日、15度では236日かかるという報告もあります。成虫の寿命は気温20度程度の場合は9~18カ月です。ただし、27度では3~4カ月と短くなります。

トコジラミのライフサイクル

卵は乳白色で米のように細長く、長さは1ミリほどですので肉眼では確認しにくいサイズです。毎日5~6個程度産み付け、接触面にしっかりとくっついています。

幼虫

幼虫は成虫と同じような形をしていますが、色は成虫よりも淡く黄色がかっています。卵から幼虫になり、幼虫の期間は1齢虫~5齢虫まで5つに分かれます。成虫になるまで合計5回脱皮します。約1mmの孵化直後の幼虫の段階からすぐ吸血します。そして脱皮するたびに吸血する必要があるとされています。

成虫

成虫は5~8ミリで約1年間生存します。飢餓に強く、吸血しなくても2年間生きたという報告があります。成虫になったメスは毎日のよう5~6個、卵を産み続けます。

トコジラミの習性・特徴

食性

  • オス、メス成虫、幼虫ともに人や動物から吸血する。
  • 主に夜間に吸血、条件によっては昼間も吸血する。
  • 血液のみが栄養源のため血液以外は摂取しない。(ノミやシラミと同様)

潜伏場所

人の就寝場所(寝室、ホテルの客室、休憩所など)で夜間に吸血活動を行い、昼間は隙間や暗い場所に潜伏しています。

代表的なトコジラミの潜伏場所

  • マットレス、ベッド台、布団、枕などの寝具
  • カーテンの折り返し部分やカーペット
  • 畳と畳の隙間や畳の下
  • タンスや机などの家具の下や隙間、裏
  • 幅木、剥がれかけのクロス、押入れや障子、襖など建具の隙間

トコジラミ潜伏、天井隅
トコジラミ潜伏、ベッド
トコジラミ潜伏、クロス裏
トコジラミ潜伏、畳

素材としては、木や布地などを好み、プラスティックなどの滑りやすい素材は比較的に潜伏場所としては好まない傾向にあります。
上記以外にも適当な隙間があれば様々な場所に潜伏します。

薬剤抵抗性

近年日本で問題になっているのは、ゴキブリ駆除等で使用されるピレスロイド系の薬剤に対し強い抵抗性が確認され9割近いトコジラミがピレスロイド系の薬剤に対して抵抗性を示すような遺伝子の変化が認められています。

トコジラミの被害

人的被害

吸血

  • 就寝中に体に吸い付き15分も吸血する。

猛烈な痒み(個人差有り)

  • 初めて刺されたときは痒くならないが、何回か刺されるうちにアレルギー反応により痒みを伴う。
  • 蚊の数倍も痒く1週間以上痒みが続くことも。

不眠症

  • 激しい痒みのため十分な睡眠が取り辛くなり場合によっては神経障害を引き起こすことももある。
  • 蚊の数倍も痒く1週間以上痒みが続くことも。

二次感染

  • 搔きすぎにより皮膚が傷つき細菌による二次感染で傷口が化膿することもある。

経済的被害

  • 完全駆除のために発生場所の調度品は廃棄せざるを得ない場合が多く買い替えの必要が出てくる。
  • 宿泊施設などでは、インターネットへの書き込みや発生した部屋は駆除が完了するまで稼働できなくことでの稼働率の低下も。
  • 宿泊施設では被害に遭われた利用客に対する治療費や慰謝料等が発生することもある。