押入れを開けたら、床や中棚のふちに細かい木の粉が落ちていた。よく見ると、板に針で刺したような小さな穴がいくつも並んでいる——。
もしそんな状況に心当たりがあれば、それはキクイムシによる木材の食害かもしれません。シロアリほど名前は知られていませんが、木造住宅にとっては決して軽く見てはいけない害虫です。
この記事では、名古屋市内の住宅で実際に確認されたキクイムシ被害の写真をお見せしながら、その正体と見分け方、そしてなぜ市販の殺虫剤だけでは収まりにくいのかを、ダスキン名古屋千成通ターミニックス店がご説明します。
キクイムシとは?乾いた木材を内側から食べる小さな甲虫
キクイムシは、その名のとおり木を食べる甲虫の仲間です。日本の住宅で被害が報告されているのは、ヒラタキクイムシ、ナラヒラタキクイムシ、ケヤキヒラタキクイムシ、アフリカヒラタキクイムシなど。中でもヒラタキクイムシは、もともと本州中部から西日本に多い種でしたが、現在は北海道まで分布を広げています。愛知県・名古屋市も当然その範囲に含まれます。

成虫の体長は2.2mm〜7.0mmと幅がありますが、平均すると3〜4mm程度。細長い体つきで、体色は赤褐色から黒褐色まで個体差があります。同じ種類でも大きさに差が出るのは、幼虫のときにどんな木材を食べて育ったかという栄養条件が影響するためです。
ここで押さえておきたいのが、私たちが目にする成虫は、被害の「結果」であって「原因」ではないという点です。
メスの成虫は、木材の表面にある道管(水を運ぶ管)に産卵管を差し込んで卵を産みます。孵化した幼虫は木材の内部にもぐり込み、内側を食べ荒らしながら数ヶ月から場合によっては2年近くをかけて成長。やがて木の中で蛹になり、成虫へと姿を変えて、板の表面に穴を開けて外へ出てきます。つまり、あなたが見ている小さな穴は、幼虫が入った穴ではなく成虫が出ていった穴(脱出孔)なのです。
発生の中心は春から夏、ピークはおおむね6月です。ただし暖房で室内が一年中暖かい住宅では、季節を問わず出現することもあります。成虫は羽化して外に出たあと10日前後で寿命を迎えるため、姿を見かける機会そのものは多くありません。「虫は見ていないのに、粉と穴だけがある」というご相談が多いのは、このためです。
キクイムシが好むのはラワン材・ナラ材などの広葉樹
キクイムシは、木であれば何でも食べるわけではありません。狙うのは乾燥した木材に含まれるでんぷんです。
メスの成虫はまず木材を試し食いし、でんぷんの含有量が一定以上ある材を選んで産卵します。さらに、卵の直径がおよそ0.16mmしかないため、それより太い道管を持つ木材でないと産卵できません。この2つの条件を満たすのが、ラワン材やナラ材といった広葉樹です。ほかにカシ、ケヤキ、キリ、タケなどにも被害が見られます。
押入れの内壁や天袋、家具の背板、フローリング、建具などにはラワン合板が使われていることが多く、これがキクイムシにとって格好の産卵場所になります。今回ご紹介する現場も、まさにその典型でした。
【実例】名古屋市内の住宅・押入れで見つかったキクイムシ被害
今月、名古屋市内の住宅で確認された事例です。押入れの中に木の粉が落ちているというご相談から、調査に伺いました。

最初に目に入ったのは、中棚のふちに散らばった細かな粉。これはキクイムシの幼虫が木材の内部を食べ進んだ際に出るフンと木くずが混ざったもので、専門的には「フラス」と呼ばれます。小麦粉のようにさらさらとしているのが特徴です。
そして、粉が落ちていた真上の板を確認したところ——。

直径1〜2mm程度の穴が、板の広い範囲にわたって無数に開いていました。1つの穴につき1匹の成虫が出ていったと考えると、この板の内部でどれだけの幼虫が育っていたかが想像できます。
穴の数以上に深刻なのが、粉の量です。

ここまで粉が堆積しているということは、被害が一度きりで終わっておらず、複数年にわたって世代交代が繰り返されていることを意味します。表面に見えている穴は出口にすぎず、板の内部はトンネル状に食い荒らされ、強度が落ちている可能性が高い状態でした。
ご相談をいただいた時点でお客様が気づいていたのは「粉が落ちている」ことだけ。押入れは普段ふすまを閉めきっており、荷物も入っていたため、板一面の穴には長らく気づかれないままだったのです。
シロアリ・シバンムシとの違いは?見分けるポイント
「木に穴」「木の粉」と聞くと、多くの方がまずシロアリを疑われます。しかし両者はまったく別の虫で、対処法も異なります。
| キクイムシ | シロアリ | シバンムシ | |
|---|---|---|---|
| 好む木材 | 乾いた広葉樹(ラワン・ナラ等) | 湿った木材・腐朽が進んだ木材 | 乾燥食品・畳・古い木材 |
| 栄養源 | 木材中のでんぷん | 木材中のセルロース | でんぷん・乾燥食品 |
| 穴の様子 | 1〜2mmの丸い穴が表面に多数 | 表面に穴は目立たない | 1〜2mmの丸い穴 |
| 粉 | さらさらした細かい粉が落ちる | 粉は出ない(蟻道・羽アリ) | 粉が出ることがある |
| 虫の見た目 | 細長い甲虫、赤褐色〜黒褐色 | 白っぽい、または黒い羽アリ | 丸みのある茶褐色の甲虫 |
ざっくりと言えば、「乾いた木+さらさらの粉+表面の小さな穴」ならキクイムシ、「湿った木+土の道(蟻道)+羽アリ」ならシロアリと覚えていただくと判別しやすくなります。シロアリの詳しい生態についてはシロアリの生態と被害のページを、食品まわりで見かける茶色い小さな虫についてはシバンムシの生態と被害のページをご覧ください。
なお、キクイムシは人を刺したり咬んだりすることはなく、健康被害を与える虫ではありません。しかし建材や家具そのものを傷める以上、放置してよい虫でもないのです。
市販の殺虫剤だけでは収まりにくい理由
ホームセンターなどでは、キクイムシに適用のあるノズル付きエアゾールが市販されています。被害が小さく、穴の数も限られている段階であれば、穴にノズルを差し込んで薬剤を注入する方法で対処できるケースもあります。
ただし、この方法には限界があります。
まず、薬剤が届くのは注入した穴とつながった坑道だけだという点です。木材の内部でトンネルは複雑に枝分かれしており、まだ表面に出口を開けていない幼虫には薬剤が届きません。彼らは翌年、あるいは翌々年に新しい穴を開けて出てきます。「駆除したはずなのに、また次の年に粉が出た」というご相談が多いのは、これが理由です。
次に、被害の範囲を正しく把握しにくいという点。今回の事例のように、粉が落ちている場所と、実際に食害が進んでいる板が離れていることは珍しくありません。目に見える穴だけを処理しても、隣接する板や、荷物の裏、天袋などに被害が広がっていれば、そこが発生源として残り続けます。
そして、穴の数が多い場合、現実的に処理しきれないという問題もあります。今回の板のように数十から百を超える穴がある状態では、1つずつ注入していく作業は現実的ではありませんし、抜けも生じます。
「押入れの隅に数個の穴」であればご自身での対処も選択肢ですが、粉が繰り返し出る・穴が年々増えている・板一面に広がっているという段階まで来ていれば、専門業者にご相談いただくことをおすすめします。
ダスキン名古屋千成通ターミニックス店のキクイムシ対応
当店では、以下の流れで対応させていただきます。
STEP 1 無料調査・お見積り
お電話またはお問い合わせフォームからご連絡いただき、訪問日を調整します。実際に現場を確認し、被害材の種類、食害の範囲、被害の進行度合いを調査します。この段階での調査・お見積りは無料です。
STEP 2 作業内容とお見積りのご提示
調査結果をもとに、必要な処理の内容と費用を事前にはっきりとお伝えします。キクイムシの被害は現場の状況によって範囲も規模も大きく異なるため、金額は必ず現地調査のうえで算出いたします。内容にご納得いただけない場合はお断りいただいて構いません。キャンセル料は一切かかりません。
STEP 3 薬剤処理の実施
ご希望の日程で作業を行います。被害材への処理に加え、周辺の未被害材への予防処理まで含めて検討します。薬剤は必要最小限の使用にとどめ、人と環境に配慮した方法を選択します。
STEP 4 その後の確認
キクイムシは羽化のタイミングが個体によってずれるため、処理後の経過確認が重要です。新たな粉や穴が出ていないか、お客様にもご確認いただきながらフォローいたします。
ダスキンには「満足の保証」があります。サービスにご満足いただけなかった場合は、ご満足いただけるまで何度でもサービスをやり直します。
キクイムシの被害を防ぐために、ご家庭でできること
キクイムシは、卵や幼虫が入り込んだ木材が家の中に持ち込まれることで発生します。つまり、入ってきてから戦うより、入れない・住みつかせない工夫のほうが効果的です。
木材を選べる場面では針葉樹を
リフォームやリノベーション、DIYで棚や家具を作る際は、ラワン材やナラ材などの広葉樹を避け、スギやヒノキといった針葉樹を選ぶだけで被害リスクを下げられます。
木部の表面を塗装で保護する
塗料やニスで表面を覆うと、メスが道管に産卵管を差し込めなくなります。無塗装の合板が露出している押入れの内壁などは、被害を受けやすいポイントです。
年に一度は押入れ・天袋の点検を
今回の事例のように、閉めきった押入れは発見が遅れる代表的な場所です。衣替えや大掃除のタイミングで荷物を出し、板と桟の上を確認する習慣をつけてください。粉が落ちていたら、必ずその真上の木部を見上げてみましょう。
中古家具・輸入家具は搬入前にチェック
リサイクル家具やアンティーク家具、輸入家具は、購入時点ですでにキクイムシが潜んでいることがあります。背板や底板の裏など、目立たない面に穴がないか確認してから室内に入れてください。ご入居前のタイミングであれば、引越しムシ駆除サービスのように、家具や荷物がない状態でまとめて対策する方法もあります。
よくあるご質問
穴は開いていますが、虫を一度も見ていません。もう終わったということですか?
いいえ、その可能性は低いとお考えください。成虫は羽化して出てきたあと10日ほどで寿命を迎えるため、姿を見る機会自体が限られています。また、羽化のタイミングは個体ごとにずれるうえ、木材の内部にはまだ穴を開けていない幼虫が残っていることがほとんどです。「粉が新しく出ているかどうか」が、活動が続いているかを判断する目安になります。
新築なのにキクイムシが出ました。なぜでしょうか?
キクイムシは、建材そのものに卵や幼虫が入り込んだ状態で家に持ち込まれることがあります。幼虫は木材の中で数ヶ月から2年近くかけて成長するため、建てた翌年や翌々年に成虫が出てくるケースがあるのです。新築であっても油断はできません。
粉を掃除機で吸えば済みますか?
粉の除去は「今も活動しているか」を確認するうえで有効です。きれいに掃除したあと、数日〜数週間後に再び粉が出ていれば、木材の内部で食害が続いている証拠になります。ただし、粉を取り除くこと自体は駆除にはなりません。原因は木材の内側にあります。
被害を受けた板は、交換しなければいけませんか?
被害の進行度によります。表面に穴がある程度で内部の強度が保たれていれば、薬剤処理での対応が可能なケースもあります。一方、内部が広範囲に食い荒らされている場合は、大工工事による交換をご検討いただくほうが確実です。判断には現地調査が必要となりますので、まずはご相談ください。
費用はどのくらいかかりますか?
キクイムシの被害は、被害材の種類・範囲・進行度によって必要な処理が大きく変わるため、一律の料金をお示しすることができません。現地調査とお見積りは無料ですので、実際の状況を確認したうえで、事前にはっきりと金額をお伝えいたします。
押入れの粉と小さな穴、そのままにしていませんか
キクイムシは、人に危害を加える虫ではありません。だからこそ「そのうち掃除しよう」と後回しにされがちです。しかし今回の事例のように、気づかないうちに世代交代を重ね、板一面が穴だらけになっていることもあります。
木の粉が落ちている。小さな穴が増えている。そんなサインに気づかれたら、まずは一度ご相談ください。名古屋市を中心に、創業50年の経験でお住まいの木部をお守りします。
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